Angels2

 カラビ=ヤウ空間――上位六位のAngelsが存在する六次元から成るといわれている空間。いくら上位といえども、人格が宿っている以上様々なAngelsが存在する。他の一般的なAngelsと違う考えを持つのはオリーブとスプラウトも実はそうなのだ。Siren以上の階級社会であるAngelsは他の階級と触れ合いたくないのが一般的である。階級が違うのに絡んでいるオリーブとスプラウトは比較的新しい考えを持っているAngelsである。Angelsを二つに分けるとしたら他の階級と触れ合わないそれらと、好奇心、または前述の考えに反発して他の階級と積極的に触れ合うそれらに分かれるであろう。

「おかえりオリーブ! レイ君とライト君は元気だった?」
「……アガット、素直になるって難しいな」
アガットと呼ばれたそれは楽しそうに複雑な形状の車輪をくるくると回す。それはいわゆるおしゃれ好きであり、あまたに付いている目の色がすべて違う。そのような目の色を変えるものは下界、HumanやSirenなどが住む場所にしかないのだが、アガットはどこからかそれを手に入れてくる。車輪の見た目をしているそれらは、自由度が高くおしゃれのために見た目を気軽に変えやすい髪も衣服をまとえるような体も持っていないので、外見を変えることに興味を抱く座天使は目の色を変える。アガットも新しい考えを持っており、下界にいつか降りる日を夢見ているが、座天使であるそれがフォーリンとなってしまうと天界、ひいては超天使カラビ=ヤウさえも巻き込むような大問題だ。
 オリーブも素直になれない、というのはアガットのように下位のAngelsや下界のHuman、Sirenに強い興味を持っているのだが位の高いAngelsであるというプライドが邪魔をしている。正直オリーブは、フォーリンになるのは論外だとしても下界のことを知ったり下位三位のカラビ=ヤウ空間ではないところにいるAngelsと絡みたいのはやまやまである。しかし位が高い、というだけで心胆を寒からしめる威圧感を自然と放ってしまう。最高位のAngelsであるスプラウトと懇意にしているのも、スプラウトがオリーブと同じ者たちに、興味を抱いているからである。

「そういえば、今どきの天使たちはフォーリンでも関係なく学校でカラビ=ヤウ様のことを学ぶそうだ。正直私もカラビ=ヤウ様のお姿は拝見したことがないのだが」
「カラビ=ヤウ様ねぇ……超天使なんて大層な名前よね」
その姿をめったに表すことがない、超天使カラビ=ヤウ。一部のHumanの研究では十次元目に存在し、四次元目から九次元目を包括した存在だという仮説が立てられている。上位六位のAngelsでさえも次元をしっかり認識しているわけではなく、彼らにとって重要なことではない。よってこのことは好奇心旺盛な一部のHuman、フォーリンあるいはそれと親しい存在の間だけでささやかれている話である。
「しっかし、オリーブも熾天使のハートをゲットするなんてすごいよねぇ。私も熾天使と仲良くしたいわぁ!」
アガットはその玉虫のようにカラフルな目をぱちくりとさせる。
「まあな、いつ機嫌を損ねるか気が気でない部分もあるが――」