「ねえレイ、結局〝超天使カラビ=ヤウ〟って存在するのかな?」
「冗談はやめてよライト、超天使はすべてを知っているんだよ」
おそらく年のころはHumanに換算して十五歳ほど、二人のAngelsが足元の雲から下界を覗く。腕と脚が二本ずつ、目が二つ、背中にはテカテカした如何にも作り物とわかる小鳥の様な白い翼がある。背中に翼がないのはAngelsの中でも最も位が低い〝天使〟の証である。例外があるとはいえ基本的に位が高くなるほど翼が多くなるAngelsの二人としては、背中もしくは体中に生え、輝いてるようにさえ見える翼は強い憧れ。そして二人の髪色は他と違って烏の塗れ羽色、下界に降り地に足を付けたことのある〝フォーリン〟の証拠である。昔、まだ幼かった二人は好奇心で下界に降りただけでこんな蔑まれるとは思わなかった。
ライトは天使、しかもフォーリンとして蔑まれていることに疑問を覚えており、下界に降りたこともなんの反省もしておらずいまだに好奇心がすべての様な行動をしている。それに対してレイはフォーリンとなってしまったことに強い後悔を抱き、せめて何とか普通の天使と同格に扱ってもらえるように奔走する日々。レイが理想とする日々に戻るためにはライトと決別したほうが良いのだろうが、二人の間には友情があるので結局いつもの二人、に落ち着くのだ。
「ねえレイ、カラビ=ヤウって結局なんなの?」
「そんなことも知らないの? 学校の授業を聞いてればわかることでしょ?」
ふたりは相変わらず仲良く駄弁っている。そこに異様な声、聞いているだけで自分が自分でなくなっていくような、そんな声が響いた。
「さっきから話を聞いていればなんだ、やっぱりフォーリンはダメだな」
「お前らが超天使の名前を出すのもおそろしい」
レイは震える体を抑え、必死に声の主を探すと頭上に周りに目がびっしりと付いた奇怪な形をした車輪と、隣には全身にくまなく猛禽類の様な翼が付き、天に向かって燃え上がった炎のように見える生命体が居た。
「ねえレイ、何こいつら? なんか嫌な感じ、しかも眩しい」
そう聞かれたレイの顔には生気が無い。
「ライト! 下を向け!」
レイの鬼気迫った声に急いでライトも顔を下げる。
妙な見た目をした、オリーブとスプラウトという名前の二体はレイとライトよりずっと高次元の存在である〝座天使〟と〝熾天使〟である。座天使は超天使を除いて上から三番目、熾天使に至っては最高位のAngelsである。七次元の存在と言われる車輪の見た目をした座天使と九次元の存在と言われる純白の炎の様な見た目をした熾天使。単なる天使、しかもフォーリンと来ては二人を直視することで目が焼き切れてしまう。
「申し訳ありません、オリーブ様、スプラウト様。どうかお許しを」
「フン、お前らなど我々が直々に手にかける価値などない」
「まあいい、そろそろ時間だ。我々は帰るとしよう」
「……見逃していただきありがとうございます」
奇々怪々な二体はさらに天空の高くへと消えていき、レイは胸をなでおろした。